長江は54年の生涯のなかで、評論、翻訳、創作、それぞれ七千枚(佐藤春夫による)の著作を残しました。
残念ながら、全10巻で企画された「生田長江全集」が5冊の発行にとどまったこと、また関東大震災、太平洋戦争の空襲などによって多くの著作が失われたことから、現在目にすることができるのはその一部にすぎません。
翻訳者としてニイチェ全集、マルクスの資本論の日本初の翻訳をはじめ多くの文学作品を紹介するかたわらで、詩、戯曲及び小説等も数多く残しています。
その真価は批評・評論にあり、著作や新聞・雑誌への精力的な寄稿を通じて自らの意見を世に問い、大正期最大の論客の一人と言われました。また、評論の分野ではいくつもの論争を引き起こし、当時の論壇に大きな影響を与えました。
|